税務に関する情報
知っておきたい最新の税務情報 第13弾 [2012.1.16]
1.概 要
消費税の益税問題を改善する観点より平成24年4月1日以後に開始する課税期間から課税売上高が5億円を超える事業者は、いわゆる「95%ルール」の適用対象から外れることとなります。
消費税では、益税が発生してしまう「割り切り」としては次の三つがあると思います。
(1)基準期間である前々期の課税売上高が1000万円以下の事業者の「納税義務免除」
(2)簡易課税制度における「みなし仕入率」
(3)課税売上割合が95%以上の場合の消費税「全額控除制度」
23年度の税制改正では(1)と(3)について変更がありましたが、(3)について簡単にまとめたいと思います。
2.内 容
平成24年4月1日以後に開始する課税期間からその課税期間の課税売上高が5億円(その課税期間が1年に満たない場合は年換算)を超える法人・個人事業者は全額控除制度の対象外となりました。これによって、課税売上割合が99.9%であっても支払った消費税の全額が控除されず、控除対象消費税を計算しなくてはならなくなったのです。
本来消費税の納税は、他人から預かった消費税から他人に支払った消費税を控除した金額として計算されますが、その控除した金額が全額差し引かれるわけではありません。消費税の課税対象となる売上高等を獲得するために支払った消費税額(控除対象消費税という)のみです。
したがって、事業者が消費税の課税売上高と非課税売上高の両方を有していた場合については、その控除対象消費税額の計算上課税仕入部分に対応するものと非課税仕入に対応するものに按分しなくてはなりません。
控除対象消費税の計算方法は、下記に掲げる個別対応方式と一括比例配分方式があります。
(1)個別対応方式 控除対象消費税額=ア+ウ×課税売上割合
(2)一括比例配分方式 控除対象消費税額=(ア+イ+ウ)×課税売上割合
ア.課税仕入等に係る消費税額のうち課税売上高のみに要するもの
イ.課税仕入等に係る消費税額のうち課税売上高以外のみに要するもの
ウ.アとイに共通して要するもの
「課税売上割合」とは、課税期間中の総売上高に占める課税売上高の割合をいい、この按分比率をいいます。
3.まとめ
個別対応方式を選択した場合、一般的には控除対象消費税額が大きくなり、消費税の納税額が小さくなります。しかし、課税売上高のみに要する課税仕入等に係る消費税額を上記ア、イ、ウに区分する必要がでてきます。故に、一定の事務負担が生じます。
一方、一括比例配分方式を選択した場合には、わざわざ課税仕入等に係る消費税額を区分する必要がなく計算が簡便です。ただし、この方法を選択すると2年間継続して適用しなければなりません。
「翌年に多額の設備投資を予定している場合などはその影響も含めて判断しなければなりませんので注意が必要です。
「当社の売上高はすべて消費税の課税対象なので改正の影響はない」と思われる方がみえるかもしれませんが、実際には、たとえば預金の利息は消費税法上非課税売上高ですので課税売上高が5億円超の事業者の多くは今回の改正の影響を受けることになります。
税理士 寺澤保之