税務に関する情報
知っておきたい最新の税務情報 第47弾 [2014.11.28]
平成26年4月1日から消費税が5%から8%に引き上げられました。この改正により消費税を納税する事業者は、平成26年4月1日以降に終了する課税期間で、その課税期間中の課税売上高や課税仕入れの金額に“旧税率適用分”が含まれているときは、旧・新税率適用分に区分した金額を基礎として消費税額を計算しなければなりません。これは、簡易課税制度を適用する場合も同様です。
消費税の簡易課税制度は、原則として、売上を第一種から第五種に区分し、それぞれの売上に対するみなし仕入率を適用して納税額を計算します。しかし、第一種事業から第五種事業までのうち2種類以上の事業を営む事業者の場合は、そのうち1つの業種の課税売上高が全体の課税売上高の75%以上を占めているときは、その事業のみなし仕入率を課税売上高の全額に対して適用することが認められています。
また、第一種事業から第五種事業までのうち3種類以上の事業を営む事業者で、2種類の事業に係る課税売上高の合計が全体の課税売上高の75%以上を占める場合、その2種類のうちみなし仕入率の高い方の事業に係る課税売上高については、そのみなし仕入率を適用し、それ以外の課税売上高についてはその2種類のみなし仕入率のうち低い方のみなし仕入率を適用して計算することが認められています。これを75%ルールと呼んでいます。
納税額を原則により計算でするか、特例計算(75%ルール)により計算するかは、どちらか有利な方を選択することができます。
旧税率適用分の売上がある場合の控除対象仕入税額の計算上の留意点
課税期間中の課税売上高に旧税率適用分(5%)と新税率適用分(8%)がある場合には、課税売上高を旧・新税率ごとに区分したうえで控除対象仕入税額を算出します。しかし2種類以上の事業を営む事業者は75%ルールの適用にあたって下記の2点について注意が必要です。
例えば、下表のように課税期間の途中で事業内容の変更等により売上割合が旧・新税率適用分で大きく変動していても75%の判定は課税期間を通じた合計額で行います。下記の例では旧税率適用分の課税売上高の割合は第一種事業と第二種事業の課税売上高を合計が75%以上となりますが、課税期間全体で見ると第二種事業と第四種事業の課税売上高を合計が75%以上となるので、特例計算は旧税率適用分も新税率適用分も第二種事業と第四種事業の組み合わせで行います。
また、控除対象仕入税額の計算においては旧税率適用分の控除対象仕入税額が「原則計算>特例計算」で、新税率適用分の控除対象仕入税額が「原則計算<特例計算」となっていますが、旧税率適用分は特例計算・新税率適用分は原則計算、とそれぞれ有利な金額を選択することはできません。旧・新税率適用分を合計したところで判断することになりますので、この場合は原則計算を選択し控除対象仕入税額は1,244,200円となります。
事業区分別の課税売上高(税抜き)
旧税率適用分 | 売上割合 | 新税率適用分 | 売上割合 | 合計 | 売上割合 | |
---|---|---|---|---|---|---|
第一種事業 | 5,000,000円 |
40.0% |
0円 |
0.0% |
5,000,000円 |
16.1% |
第二種事業 | 5,000,000円 |
40.0% |
12,000,000円 |
64.9% |
17,000,000円 |
54.8% |
第四種事業 | 2,500,000円 |
20.0% |
5,500,000円 |
29.7% |
8,000,000円 |
25.8% |
第五種事業 | 0円 |
0% |
1,000,000円 |
5.4% |
1,000,000円 |
3.2% |
12,500,000円 |
18,500,000円 |
31,000,000円 |
課税売上高に係る消費税額
旧税率適用分 | 新税率適用分 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
第一種事業 | ① |
200,000円 |
⑥ |
0円 |
200,000円 |
第二種事業 | ② |
200,000円 |
⑦ |
756,000円 |
956,000円 |
第四種事業 | ③ |
100,000円 |
⑧ |
346,500円 |
446,500円 |
第五種事業 | ④ |
0円 |
⑨ |
63,000円 |
63,000円 |
⑤ |
500,000円 |
⑩ |
1,165,500円 |
1,665,500円 |
控除対象仕入税額
▼原則計算

▼特例計算

税理士 春田 猛