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HOME労務・税務・金融税務に関する情報 > 知っておきたい最新の税務情報 第82弾

知っておきたい最新の税務情報 第82弾 [2017.10.18]

タワーマンション課税の見直し
1.見直しの背景

 平成29年度税制改正において、いわゆるタワーマンション課税の見直しが行われました。マスコミに報道されたこともありご存知の方も多いのではないかと思います。
 この見直しの背景にあるのは、次のようなものです。
 地方税法上、固定資産税の算定において、マンションのような区分所有建物については、一棟の建物を一括で評価したうえで、各区分所有者の専有部分の床面積割合で按分することとされています。しかし、タワーマンションのような超高層建築物の場合、高層階と低層階で販売価格に開差があるにもかかわらず、これが固定資産税の計算に反映されないこととなってしまい公平性に欠けるという問題がありました。なお、固定資産税のほか都市計画税、不動産取得税についても同様に見直しが行われました。


2.算定方法見直しの内容

 タワーマンション課税の見直しの内容は次のようなものです。

①対象となる建物は、高さが60mを超える建築物(建築基準法令上の「超高層建築物」)のうち複数の階に住戸が所在しているもの(「居住用超高層建築物」という)です。高さが60mを超える建物というのは、マンションの場合、一般的に1階3mとされており、20階程度以上のマンションということになります。
②各区分所有者の専有部分の床面積を、住戸の所在する階層の差異による床面積当たりの取引単価の変化の傾向を反映するための補正率により補正します。この補正率のことを「階層別専有床面積補正率」と呼びます。
③「階層別専有床面積補正率」は、取引価格の傾向を踏まえ、居住用超高層建築物の1階を100とし、階が一を増すごとに、これに10を39で除した数を加えた数値とされます。
④タワーマンション1棟の全体の固定資産税総額は、通常の区分所有建物の評価方法と同じであるため、高層階の税額が増加し、低層階の税額は減少することになります。
⑤上記①から④にかかわらず、タワーマンションの区分所有者全員による申し出があった場合には申し出た割合によって固定資産税額を按分することができるものとされています。
⑥適用時期については、平成30年度の固定資産税から新たに課税されるタワーマンションに適用されます。但し、平成29年4月1日前(つまり平成29年3月中まで)に売買契約が締結されたものは、改正前の税制が適用されます。


3.実際の計算方法と問題点

 上記の改正内容を計算式で示すと次のようになります。
階層別専有面積補正率の計算は、
   補正率=100+10/39×(n階−1)
各戸の固定資産税の計算は、
   各戸の固定資産税=

(一棟全体の固定資産税)×
(各戸の専有床面積)×(階層別専有床面積補正率)
(一棟における補正後の専有床面積の合計)

 上記の通りに計算した場合、実際にタワーマンションの各階でどの程度の違いが生じるのか計算したものが下記の表のようになります。スペースの都合上すべての階層は載せていません。なお、便宜上、各階の戸数、各戸の床面積はすべて等しく、敷地にかかる固定資産税は考慮の対象外という前提で計算されています。また、中層階の計算結果を示すため、あえて奇数階の41階建てという設定にしました。


補正率(%)
戸数
改正後(補正後)の
固定資産税額
(円)
改正前の
固定資産税額
(円)
改正前後の
差異(円)
41
110.25641
10
314,634
300,000
14,634
40
110
10
313,902
300,000
13,902
30
107.4359
10
306,585
300,000
6,585
22
105.3842
10
300,732
300,000
732
21
105.12821
10
300,000
300,000
0
20
104.87179
10
299,268
300,000
-732
10
102.30769
10
291,951
300,000
-8,049
1
100
10
285,366
300,000
-14,634

41階建 戸数410戸(各階10戸、すべて等しい床面積)
非居住用部分なし、敷地の固定資産税は考慮せず
固定資産税の総額 1億2,300万円(一戸当たり平均30万円)


 上記の表でおわかりのように、一棟全体に係る固定資産税の総額は変わることはなく、高層階にかかる税額が増加し、低層階にかかる税額が減少することになり、中層階になるほど増減の幅は小さくなります。
 また、1階と最上階との税額の差異が約10%、中層の21階からみて中層階、低層階の増減がそれぞれ5%足らずでしかなく、実際の販売価格の差異に鑑みると少なすぎるのではないかとの指摘もあります。
 なお、今回の改正は、タワーマンションの固定資産税等の算定方法(税額の按分方法)の改正であって、固定資産税評価額の評価方法や相続税等の評価方法の改正ではないことに注意が必要です。建物部分の相続税評価額は、固定資産評価額に倍率(1.0)を乗じた金額とされていますが、評価方法自体に変更がないため、相続税評価額に対する影響はないことになります。
 また、今回の改正では、マンションの敷地にかかる固定資産税の算定方法については何らの見直しもされておらず従前のままの算定方法であり、各階層で差異が生ずることはありません。今後の議論となりうるのではと思われます。


4.タワーマンション節税スキームの問題点

 ところで、こうした固定資産税評価額と実際の販売価格との開差を利用して、相続税対策を行う節税スキームが問題とされています。
 たとえば、相続開始直前にタワーマンションの最上階を購入し、所有者が死亡し、相続が開始したとします。
 相続税申告では、タワーマンションの建物部分を固定資産税評価額で評価し、敷地部分は戸数が多いほど評価額は低くなります。その結果、タワーマンションについては購入価格よりも低い金額で評価されることになります。
 その後、このマンションを売却して投下資本を回収すれば、数億円の現預金の価格を相続開始時点で圧縮することができます。購入時の価格よりも売却価格は若干下落したとしても、購入価格と相続税評価額との開差による節税額のほうが大きいことからメリットが生じるわけです。
 しかしながら、こうした方法により相続税を節税したケースで課税庁より否認を受け、争いになった事例があります。国税不服審判所の平成23年7月1日裁決では、相続直前にタワーマンションを2億9300万円で購入し、被相続人が亡くなった直後にこれを2億8500万円で売却し、その間まったく居住もしていなかったケースで、固定資産税評価額(5800万円)が否認されマンションの購入価額を評価額とすべしとされました。
 財産評価基本通達の評価方法(ここでは固定資産税評価額)は形式的な評価方法に過ぎず、本通達による評価方法が適切でない場合には他の合理的な方法により評価することができるとされています。タワーマンションを相続直前で購入し、さらに売却までの時期が相続をはさんで短期間であることから、相続税を不当に減少させるための行為であるとの判断がなされたものといえます。
 一般的に、タワーマンションの節税スキームにおける相続税評価額の是非については、購入時期および売却時期、購入から売却までの所有期間、タワーマンション購入の目的と実際の使用状況、売却に至った事情等を総合的に勘案して判断がなされるものと思われます。
 今回の固定資産税の算定方法についての法改正自体は、先に述べたように評価方法を見直すものではないため、タワーマンション節税スキームの問題に関して直接影響を与えるものではありません。今後、タワーマンションの評価方法自体を見直すべきとの議論が生じるかどうかはわかりませんが、今回の改正が、富裕層への課税強化の問題を含め、こうした議論に一石を投じることになったのではと思われます。


税理士 小林正俊