税務に関する情報
知っておきたい最新の税務情報 第89弾 [2018.05.08]
従来「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地」については、開発行為の負担を考慮し、一定の要件の下、「広大地」として相続税評価額が減額されてきました。
しかしながら、従来の広大地の評価は、個別の土地の形状等とは関係なく面積に応じて比例的に減額するものであったため、土地の形状によっては、実際の取引価格と相続税評価額が著しく乖離する場合が生じていました。また、広大地評価の適用要件が不明確であったため、広大地に該当するか否かの判断に苦慮するなどの問題も生じていました。
そのため、平成29年9月の財産評価基本通達の一部改正により、改正前の「広大地の評価」(改正前の評価通達24-4)は廃止され、新たに「地積規模の大きな宅地の評価」(評価通達20-2)が新設されました。これにより面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すとともに、適用要件については、地区区分や都市計画法の区域区分等を基にすることにより明確化が図られました。この通達による評価は、平成30年1月1日以後の相続等により取得する財産について適用されることとなりました。
次の(1)から(3)のいずれにも該当する宅地となります。
(1)地積が500㎡(三大都市圏以外は1,000㎡)以上の宅地
(2)普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地域に所在する宅地
(3)次の①~④のいずれにも該当しない宅地
①市街化調整区域(都市計画法に規定する開発行為を行うことができる区域を除く)に所在する宅地
②都市計画法に規定する用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
③容積率が400%(東京都の特例区においては300%)以上の地域に所在する宅地
④評価通達22-2に定める大規模工場用地
「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地の評価は、路線価に、奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額となります。
評価額 | = | 路線価 | × | 奥行価格 補正率 |
× | 不整形地補正率などの 各種画地補正率 |
× | 規模格差 補正率(※) |
× | 地積(㎡) |
(注) 1 倍率地域に所在する「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地については、
次に掲げる①の価額と②の価額のいずれか低い価額により評価します。
①その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額
②その宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額に、
普通住宅地区の奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、
規模価格補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額
2 市街地農地等(市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林及び市街地原野)については、
その市街地農地等が宅地であるとした場合に「地積規模の大きな宅地の評価」の
対象となる宅地に該当するときは、「その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」について
「地積規模の大きな宅地の評価」の定めを適用して評価します。
上記算式中の「B」及び「C」は、所在する地域に応じて、それぞれ次の表のとおりとなります。
普通商業・併用住宅地 |
||||
積 ㎡ | ||||
普通商業・併用住宅地 |
||||
積 ㎡ | ||||
形状の良い土地の場合は、この改正により評価額が大きくなると予想されるため注意が必要です。一方、従来広大地評価が検討できなかった宅地でも、要件を満たせば評価額の軽減が見込まれる場合もあります。広大な土地をお持ちの方は、相続税試算の見直し、遺言の見直しなどをご検討ください。
税理士 林 豊文