【税務】第125弾 年末調整手続の簡素化とマイナポータル

 令和2年度分の年末調整から、手続の電子化に向けた施策が実施されました。ここでは年末調整手続の電子化及びマイナポータルの概要について説明します。

1.現状の手続

 これまでの年末調整手続は、従業員が生命保険料控除や住宅借入金等特別控除を受ける場合、保険会社や銀行等から書面で送付された「生命保険料控除証明書」や「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」などを用いて、年末調整の際に作成する控除申告書を作成し控除証明書とともに勤務先に提出する必要があります。
 また、提出を受けた勤務先は、書面の控除証明書等に記載されている金額等と控除申告書に記載されている金額が合っているか等の確認に加え、書類の保管が必要となります。

2.現状の課題

①保険会社等

 控除証明書等を書面で発行していることから、印刷や郵送に係る費用や手間がかかります。

②従業員

 保険会社等から送られてきた控除証明書等の年間支払額を控除区分ごとに手書きする作業が必要となります。また、控除証明書等を紛失した場合には再発行手続き等の作業が必要となります。

③勤務先

 従業員から受け取った控除申告書に手書きされた年間の支払額と控除証明書等との突合を行い、不明がある場合は従業員に確認する必要があります。さらに、従業員から提出を受けた控除申告書や控除証明書等の書面を7年間保存する必要があります。

 そこで、こうした課題に対し、従業員・勤務先双方の年末調整手続に要する事務の簡素化を図るため、書面で提出を受けた控除証明書等を基に手書きで控除申告書を作成するのではなく、電子的に発行された控除証明書等から控除申告書を自動で作成されるように年末調整手続の電子化が進められています。

3.電子化に向けた取り組み

 電子化を進めるに当たって、まず、従業員が年末調整で提出する控除申告書を電子的に作成する年末調整ソフトを提供するとともに、年末調整手続で必要となる情報を一括で取得し、その情報を申告書へ自動入力できる仕組みが考えられています。

  1. 令和2年10月から、国税庁は従業員が控除申告書を電子的に作成することが可能な年末調整ソフトを無償で提供しています。
  2. 保険会社等のホームページ(いわゆる「お客様ページ」)から、控除証明書等のデータを取り込むことが可能になりました。しかし、保険各社のホームページから控除証明書等のデータをそれぞれ取り込むのではなく、マイナポータルで一括入手し、その入手したデータを控除申告書に自動入力して、申告書を作成することも可能になりました。これにより従業員の負担を軽減し、年末調整手続のデータ取得が簡素で効率的になることが期待されます。

4.電子化のメリット

①従業員のメリット

 従業員はこれまでの手書きによる申告書の記入や控除額の計算を省略でき、控除申告書の作成を簡素化できます。

②勤務先のメリット

 勤務先は、従業員が年末調整ソフトで作成した申告書データを利用することにより、控除額の検算が不要となります。また、添付書類等の確認に要する事務が削減されます。さらに、ソフトウエアを利用して控除申告書を作成するために記載誤りなどが減少します。加えて、控除申告書や控除証明書等の保管コストを削減することができます。

5.電子化へ向けた準備

 勤務先は、従業員から申告書を電子データで提出してもらうためには、事前に所轄の税務署へ「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、その承認を受ける必要があります。控除証明書を保険会社のホームページやマイナポータル連携等で従業員に各自取得していただくよう周知する必要があります。また、従業員は申告書を作成するためのパソコンやマイナポータルを使う場合はICカードリーダー等も必要となります。

税理士 大矢啓資

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