【税務】第136弾 相続税の申告期限と遺産分割協議の関係及び注意点について

1 はじめに

 相続税の申告にあたり、相続税の申告期限内に遺産分割協議を成立させる必要があるのかについて気になる方もいらっしゃると思います。そこで、今回は、相続税の申告期限と遺産分割協議との関係及び注意点について説明します。

2 相続税の申告期限

 相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の最後の住所地を所轄する税務署長に行う必要があります。申告期限の日が土曜、日曜、祝日のときは、これらの次の平日が期限になります。
 申告期限までに申告をしなかった場合は、無申告加算税が課せられる場合があります。

3 申告期限までに遺産分割協議が成立しない場合

 各相続人が納付すべき相続税の額は、遺産分割協議が成立し、各相続人が取得する相続財産が決まらないと、計算することができませんが、遺産分割協議が成立し、各相続人が取得する相続財産が決まるまで、相続税の申告及び納付をしなくてもよいということではありません。各相続人が民法で定められている法定相続分の割合により相続財産を取得したものと仮定して、相続財産の価額等を計算して申告し、納付しなければならないこととされています。
 その後、遺産分割協議が成立したら、その遺産分割協議により各相続人が実際に取得した相続財産に基づいて、納付すべき相続税の額を再度計算します。再計算した結果、納付すべき相続税の額が、遺産分割協議が成立する前に申告した額よりも増えた相続人は修正申告を行い、減少した相続人は更正の請求をすることになります。更正の請求ができるのは、遺産分割協議が成立した日の翌日から4か月以内とされている点には注意が必要です。
 なお、遺産分割が成立していない場合の相続税の申告では、納税者にとって課税上大きなメリットがある小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(宅地等の評価が最大8割減額される)や配偶者に対する相続税額の軽減の特例(配偶者については、相続税の総額の内、その配偶者の法定相続分又は1億6000万円相当分までは相続税が課税されない)などを適用することができません。
 また、遺産分割協議が成立していないことから、原則として相続財産の預貯金を納税に充てることができないため、自己資金で納税を行う必要があります。

4 特例を適用して相続税申告を行うための手続き

 遺産分割協議が成立していなかったため、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例や配偶者に対する相続税額の軽減の特例を利用することができなかったとしても、遺産分割協議が成立した後に、これらの特例を適用し、更正の請求を行うことができる場合があります。具体的には、遺産分割が成立していない段階での申告の際、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておく必要があります。
 相続人間の争いにより遺産協議が成立するのに長期間かかることも珍しいことではありませんが、申告期限後3年以内に遺産分割協議が成立しない場合に特例を利用するためには、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに提出しておく必要があります。

5 最後に

 遺産が多い、相続人が多い、相続人の間で元々争いがある場合など、相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立しないのではないかなどの不安のある方は、早めに税理士にご相談ください。

税理士 森田 清則

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