【税務】第142弾 家屋の固定資産税評価額について

 土地、家屋及び償却資産(以下「固定資産」といいます。)については、その年1月1日の固定資産の所有者に対して、固定資産が所在する市町村において、その固定資産の1月1日における価格に基づいて固定資産税が課されます。毎年4月か5月頃に固定資産の所有者には、固定資産税を課する市町村から固定資産税の納税通知書及び課税明細書が送られてきます。ここには固定資産課税台帳に登録された価格(以下「固定資産税評価額」といいます。)や固定資産税の課税標準額、税率、税額、納期限などが記載されていますが、固定資産税評価額の算出過程については一般的にあまり知られていないものと思われます。そこで、ここでは家屋の固定資産税評価額について説明します。

1.家屋の固定資産税評価額の意義

 固定資産税の課税対象となる家屋は、不動産登記法の建物と同義とされ、その種類には、住宅や店舗、工場、倉庫などがあります。固定資産税は固定資産の「適正な時価」を課税標準として課税することとされており、家屋については、原則として、総務大臣が定める「固定資産評価基準」に基づいて「再建築価格方式」により評価した固定資産税評価額がこれにあたるものとされています。この固定資産税評価額は、その家屋を評価時に再建築すれば建築費がいくらかかるかというもので、実際の取得価額とは異なります。

2.固定資産評価基準の評価替え

 固定資産税評価額の計算の基となる「固定資産評価基準」は、3年ごとに評価替えが行われます。この評価替えが行われる年度を基準年度といい、直近では令和3年度が基準年度となっています。したがって、現在使われている固定資産評価基準は「令和3基準年度固定資産評価基準」となります。

3.固定資産評価基準に基づく家屋の評価

 固定資産評価基準に基づく家屋の評価(以下、「家屋評価」といいます。)は大変複雑です。すべての家屋に適用される唯一の評価基準があるわけではなく、まずはその家屋が「木造家屋」か「非木造家屋」かによって適用される評価基準が異なります。
 また、さらに木造家屋であれば、「専用住宅用建物」、「共同住宅及び寄宿舎用建物」「併用住宅用建物」など13種類に、非木造家屋であれば、「事務所、店舗、百貨店用建物」「住宅、アパート用建物」など9種類に分けられ、それぞれの種類によって各部分別の標準評点数が異なります。
 木造家屋については、種類分けした評価対象家屋を「屋根」、「基礎」、「外壁仕上」、「柱・壁体」、「内壁仕上」、「天井仕上」、「床」、「建具」、「建築設備」、「仮設工事」、「その他工事」の11部分に分け、非木造家屋については、評価対象家屋を「主体構造部」、「基礎工事」、「外周壁骨組」、「間仕切骨組」、「外壁仕上」、「内壁仕上」、「床仕上」、「天井仕上」、「屋根仕上」、「建具」、「特殊設備」、「建築設備」、「仮設工事」、「その他工事」の14部分に分け、それぞれ部分別の標準評点数に「補正係数」及び「延べ床面積」、「個数」などの計算単位を乗じて「各部分別の再建築費評点数」を算出した後、これらを合算して「家屋の再建築費評点数」を算出します。
 この「家屋の再建築費評点数」に「損耗の状況による減点補正率」及び「需給事情による減点補正率」を乗じたものが「家屋の評点数」となり、さらに、「物価水準による補正率」に「設計管理などによる補正率」を乗じた「評点一点当たりの価額」をこれに乗じたものが家屋の固定資産税評価額となります。
 また、上記2.のように、3年ごとに「固定資産評価基準」の評価替えが行われるため、一度決定された家屋の固定資産税評価額も3年ごとに見直され、さらに、経過年数に応ずる減点補正率も加味されていきます。

4.家屋評価を行う者

 家屋評価の項目は非常に細部にわたるため、家屋評価を行う者は、家屋の内部にまで立ち入って、実際の寸法や使用されている資材、設備の個数などを確認するための実地調査を行います。

(1)市町村が行う場合

 家屋評価は、地方税法に基づいて、原則として、その家屋が所在する市町村の固定資産評価員が行い、市町村長が固定資産税評価額の決定を行います。

(2)道府県が行う場合

 家屋については、道府県税である不動産取得税も固定資産税評価額に基づいて課税されますが、不動産取得税は家屋を取得した時に課税されるため、固定資産税よりも課税の時期が先になります。このため、新築された家屋については、道府県知事が上記3.のように家屋評価を行って、家屋の固定資産税評価額を算出する場合もあります。
 この場合には、地方税法に基づき、道府県知事から市町村長にその固定資産税評価額が通知され、通知を受けた市町村は、新築の翌年以後、1月1日におけるその家屋の所有者に対して、その通知を受けた固定資産税評価額に基づいて固定資産税を課することになります。

5.様々な税金の課税に使われる家屋の固定資産税評価額

 家屋の固定資産税評価額は、これまで述べてきた固定資産税、不動産取得税の他、市町村税である都市計画税、国税である登録免許税や相続税、贈与税の課税にも使われています。

税理士 野村 俊之

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