【税務】第155弾 マンションの相続税評価額

はじめに

 令和4年4月19日、最高裁から、いわゆる「マンション節税」の判決が出されました。これに伴い、評価通達が改正され、令和6年1月から、一部のマンションの相続税評価額が引き上げられることになりました。

1.事案の概要

 相続や贈与の時には、取得の時における時価(相続税法22条)によって申告納税することが原則とされています。しかしながら、時価を正しく求めることは困難であるため、国税庁長官が定める評価通達による評価額が、実務上、多くの場合で用いられています。評価通達6には、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」とあり、すべてを評価通達によるべきだといっているわけではありません。
 本件訴訟では、高齢者が多額の借入を行い、2棟のマンションを購入し、その数年後に亡くなりました。相続人が相続したマンションは、評価通達によると、購入時の4分の1程度で評価され、取得に要した借入金は全額控除されています。そのため、3億円近くの相続税負担がゼロになったということです。納税者は評価通達による評価額ではなく、鑑定評価額で税務署長から更正処分を受けました。通達通りの評価額で申告しているのに、なぜいけないのかと争い、国税不服審判所の審査請求を経て、出訴に至りました。

2.裁判所の判断

 東京地裁、東京高裁に引き続き、最高裁でも納税者敗訴の判決が出され、確定しました。
 「本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したというのであるから、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものといえる。」
 「評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反する」とされました。
 「各更正処分において、各不動産の価額を各鑑定評価額に基づき評価したことは、適法というべきである」とし、納税者の上告が棄却されました。

3.評価通達の改正

 国税庁は、3回の有識者会議を経て、「居住用の区分所有財産の評価について」の法令解釈通達(案)に対するパブリックコメントを求め、新たな通達が公表されました。
 現状、マンションを含めた家屋の相続税評価額は、固定資産税評価額に1.0倍を乗じた価額とされ、土地については、路線価方式か、倍率方式による評価額によっています。このような評価額が、実勢価格と大きく乖離していることが、問題だとされています。
 そこで新たな通達では、「重回帰分析」という統計的手法を用いて、4指数(「築年数」「総階数(総階数指数)」「所在階」「敷地持分狭小度」)から、計算式を作っており、評価水準が60%未満の場合には、市場価格理論値の60%になるよう評価額を補正する、ということです。高層マンションの高層階は、特に、評価乖離率が大きくなるようです。
 今般の通達は、区分所有のマンションを対象としたものであり、最高裁令和4年4月19日判決で取り扱われたような1棟ごとのマンションを対象としたものではありません。1棟ごとの賃貸マンションをはじめとする不動産であっても、実勢価格と通達評価額が大きく異なり、租税負担の軽減を目的としていると考えられるような場合には、評価通達6が適用される可能性も考えられます。

おわりに

 高層マンションを所有し、居住しているような場合には、令和6年1月1日以後の相続や贈与における評価額が引き上げられる可能性があります。このようなマンションを所有している方は、一度、自分のマンションが対象になるか否か、調べてみてはいかがでしょうか。

税理士 木村 幹雄

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