【税務】第157弾 災害等により損害を受けた時の所得税の軽減について

 令和5年中に岐阜県内でも台風や大雨による被害が発生しており、ご自身のマイホームが被災された方もいらっしゃると思います。災害などによって、一定の要件を満たす資産について損害を受けた場合には、所得税法に定める所得控除(以下、雑損控除という)又は災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(以下、災害減免法という)による所得税額の軽減、免除を受けることができ、確定申告時に納税者の選択により有利な方法を選べます。

1.雑損控除の概要

 災害または盗難若しくは横領によって、下記の①雑損控除の対象になる資産の要件にあてはまる資産について損害を受けた場合などには、確定申告時に一定の金額の所得控除を受けることができます。

①雑損控除の対象になる資産の要件

 損害を受けた資産が次のいずれにも当てはまること。
(1)資産の所有者が次のいずれかであること。
  イ 納税者
  ロ 納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が48万円以下の方

(2)棚卸資産もしくは事業用固定資産等又は「生活に通常必要でない資産」(別荘など趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で保有する不動産、貴金属や書画、骨董など1個又は1組の価額が30万円超のものなど生活に通常必要でない動産)のいずれにも該当しない資産であること。

②損害の原因

 次のいずれかの場合に雑損控除が受けられます。なお、詐欺や恐喝の場合には雑損控除は受けられません。
(1)震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
(2)火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
(3)害虫などの生物による異常な災害
(4)盗難
(5)横領

③雑損控除の金額

 次の(1)と(2)のうちいずれか多い方の金額です。
(1)(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
(2)(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円

 なお、損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後3年間、また、令和5年4月1日以後に発生する「特定非常災害」(特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第2条第1項の規定により特定非常災害として指定された非常災害をいいます。)により生じた損失額については5年間に繰り越して、各年の所得金額から控除することができます。

  • 「損害金額」とは、損害を受けた時の直前におけるその資産の時価を基にして計算した損害の額です。
  • 「災害等関連支出の金額」とは、次のような支出をいいます。
  • 災害により滅失した住宅、家財などを取壊しまたは除去するために支出した金額など
  • 盗難や横領により損害を受けた資産の原状回復のための支出など
  • 「保険金等の額」とは、災害などに関して受け取った保険金や損害賠償金などの金額をいいます。
  • 「災害関連支出の金額」とは、上記「災害等関連支出の金額」の①の金額をいいます。

④手続

 確定申告書に雑損控除に関する事項を記載して提出するとともに、災害などに関連したやむを得ない支出の金額の領収を証する書類を添付するか、提示します。

2.災害減免法による税金の軽減免除の概要

 その年の合計所得金額が1,000万円以下の人が災害によって、下記の①災害減免法の対象になる住宅や家財について甚大な損害を受けた場合などには、所得金額に応じた所得税の軽減、免除があります。

①災害減免法の対象になる資産の要件

 損害を受けた資産が次のいずれにも当てはまること。
(1)資産の所有者が次のいずれかであること。
  イ 納税者
  ロ 納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が48万円以下の方
(2)住宅又は家財で、損害額が住宅や家財の時価の10分の5以上であること。

②損害の原因

 次のいずれかの災害に限られ、雑損控除が適用できる盗難、横領は対象外です。
(1)震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
(2)火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
(3)害虫などの生物による異常な災害

③所得税の軽減・免除額

 合計所得金額に応じて、以下の通り所得税が軽減、免除されます。

500万円以下の場合所得税の全額
500万円超750万円以下の場合所得税の10分の5
750万円超1,000万円以下の場合所得税の10分の2.5

④手続

 確定申告書に適用を受ける旨、被害の状況、損害金額を記載して提出します。

3.まとめ

 災害による被害を受けないことが何よりですが、万が一、ご自身や家族が災害に合われた場合には、所得税額の軽減策があることを知っておいていただければ幸いです。
 その年の合計所得金額が1,000万円以下の場合は、所得水準及び損害額に応じ、雑損控除を適用するか、災害減免法を適用するかによって、減免額の多寡が生じます。具体的な数字を判定する必要がありますので、確定申告時には専門家へご相談することをおすすめいたします。

税理士 花村崇裕

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!