【税務】第131弾 電子帳簿保存法の改正について

1.はじめに

 経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、記帳水準の向上に資するため、令和3年度の税制改正において帳簿書類を電子的に保存する際の手続等について、抜本的な見直しが行われ令和4年1月1日より施行されます。
 今回は、改正の概要を取り上げるとともに、改正のうち事務負担の軽減措置に係る内容の留意点に絞って解説していきたいと思います。

2.電子帳簿保存法とは

 電子帳簿保存法とは、各税法で原則紙での保存が義務づけられている帳簿書類について一定の要件を満たした上で電磁的記録(電子データ)による保存を可能とすること及び電子的に授受した取引情報の保存義務等を定めた法律です。
 法律上、電磁的記録による保存区分は以下のように区分されています。

  1. 電子帳簿等保存(電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存)
  2. スキャナ保存(紙で受領・作成した書類を画像データで保存)
  3. 電子取引(電子的に授受した取引情報をデータで保存)

3.改正の概要

 それでは、保存区分ごとに改正の概要を見ていきましょう。改正の内容はおおまかに事務負担の軽減、罰則規定や軽減措置の整備に区分されます。

電子帳簿等保存区分改正事項の概要
①電子帳簿等保存(ア)所轄税務署長の事前承認制度の廃止
(イ)優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の整備
(ウ)最低限の要件を満たす電子帳簿について、電磁的記録による保存等が可能とする条件緩和
②スキャナ保存(ア)所轄税務署長の事前承認制度の廃止
(イ)タイムスタンプ要件、検索要件等の緩和
(ウ)適正事務処理要件の廃止
(エ)スキャナ保存された電磁的記録に関連した不正があった場合の重加算税の加重措置の整備
③電子取引(ア)タイムスタンプ要件、検索要件等の緩和
(イ)申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録の出力書面の保存をもって電磁的記録の保存に代えることができるとする措置の廃止
(ウ)電子取引の取引情報に係る電磁的記録に関して、仮装・隠蔽した事実があった場合、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置の整備

4.事務負担軽減措置に係る改正内容の留意点

 事務負担の軽減措置の内容は、上記表の内、所轄税務署長の事前承認制度が廃止、タイムスタンプ要件、検索要件等の緩和、適正事務処理要件の廃止になります。
 この中からさらに、実務導入にあたり検討が必要な箇所を抜粋し内容を見ていきましょう。

①タイムスタンプ要件の内容(表②(イ)、③(ア))
 タイムスタンプを付与する際、一般的には日本データ通信協会から認定を受けているタイムスタンプ事業者のサービスを利用する等によりタイムスタンプの有効性を確保する必要があります。
 改正後においても発行者側でタイムスタンプ付与が必要であること、受領者側の管理方法についても必要に応じて管理条件を満たすクラウドサーバー等を利用しなければならないことから、サービスや機器の導入・利用に係るコストに留意が必要です。

②検索要件等の緩和の内容(表①(ウ)の一部、②(イ)、③(ア))
 検索に必要な記録項目について、取引年月日、取引金額及び取引先に限定されました。
 また、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることを条件に金額や日付の範囲検索、任意の記録項目の組み合わせ検索の要件が不要となりました。
 しかしながら、単一項目での検索は一部の小規模な事業者が行う電子取引を除き改正後も利用出来なければいけません。そのため、検索要件を満たす管理方法を検討する必要があります。
 なお、基準期間の売上高が1,000万円以下である小規模事業者は、表③の電子取引については単一項目での検索要件も不要となります。

5.まとめ

 今回は電子帳簿保存法の改正と帳簿書類の電子保存を利用する際の留意点を一部ご紹介させていただきました。
 帳簿書類の電子化は保管スペースの削減や印刷・郵送コストの削減等事業活動上のメリットがあります。検討の際は税理士にお尋ねください。

(原稿について)
作成にあたり国税庁の下記リンクを参考にしています。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf

税理士 平工雄基

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