【税務】第145弾財産債務調書制度の基本と改正点について

1 令和4年分確定申告書の提出が今年も2月16日からはじまります。確定申告に関連して、今回は「財産債務調書制度」について基本制度と改正点についてお伝えします。

1-1 各種所得金額の合計額が2,000万円超の場合、調書の提出義務有り

 所得税等の確定申告書を提出しなければならない方又は所得税の還付申告書(その年分の所得税の額の合計額が配当控除額及び年末調整で適用を受けた住宅借入金等特別控除額の合計額を超える場合におけるその還付申告書に限ります。)を提出することができる方で、その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額(一定の条件有)が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産を有する方は、その財産の種類、数量及び価格並びに債務の金額その他必要な事項を記載した財産債務調書を、その年の翌年の3月15日までに所得税の納税地の所轄税務署に提出しなければなりません。同時に、別途「財産債務調書合計表」を作成し、添付する必要があります。

1-2 財産の価額と記載事項等

 財産の「価額」は、その年の12月31日における「時価」又は時価に準ずるものと「見積価額」により記載し、調書には提出者の氏名・住所又は居所・マイナンバー(個人番号)に加え、財産の種類、数量、価額、所在及び債務の金額等を記載することとされています。
 なお、財産債務調書を提出する方が国外財産調書を提出する場合には、その財産債務調書には、国外財産調書に記載した国外財産に関する事項の記載は要しません(国外財産の価額を除く。)。

1-3 加算税軽減等の措置

 財産債務調書を提出期限内に提出した場合には、財産債務調書に記載がある財産又は債務に関して所得税等・相続税の申告漏れが生じたときであっても、その財産又は債務に係る過少申告加算税等が5%軽減されます。
 また、財産債務調書の提出が提出期限内にない場合や提出期限内に提出された財産債務 調書に記載すべき財産又は債務の記載がない場合(重要なものの記載が不十分と認められる場合を含みます。)に、その財産又は債務に関して所得税等の申告漏れ(死亡した方に係るものを除きます。)が生じたときは、その財産又は債務に係る過少申告加算税等が5%加重されます。

2 令和5年分(令和6年3月15日提出期限)確定申告書以後適用の改正点

2-1 財産債務調書の提出義務者の見直し

 現行の財産債務調書の提出義務者のほか、その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が10億円以上である居住者も提出を要します。

2-2 財産債務調書等の提出期限の見直し

 財産債務調書の提出期限について、その年の翌年の6月30日(現行:その年の翌年の3月15日)と後倒しされます(国外財産調書についても同様)。

2-3 提出期限後に財産債務調書等が提出された場合の宥恕措置の見直し

 提出期限後に財産債務調書が提出された場合において、その提出が、調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その財産債務調書は提出期限内に提出されたものとみなす措置について、その提出が調査通知前にされたものである場合に限り適用することとされます(国外財産調書についても同様とする。)。

2-4 財産債務調書等の記載事項の見直し

 財産債務調書への記載を運用上省略することができる「その他の動産の区分に該当する家庭用動産」の取得価額の基準を300万円未満(現行:100万円未満)に引き上げるほか、財産債務調書及び国外財産調書の記載事項について運用上の見直しが行われます。
 なお、2-1,2,4は令和5年分以後、2-3は令和6年1月1日以後に提出される場合について適用されます。

詳しくは税務署、税理士、にご確認ください。

税理士 浅井孝一

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