【税務】第146弾 贈与税の申告について

 今年も贈与税の申告期間(令和5年2月1日から3月15日まで)が到来しました。改めて、贈与税の概要と申告の注意点を説明します。

1.概要

 贈与税は、個人間の贈与により財産を取得したときにかかる税金です。法人から贈与により財産を取得したときは、贈与税ではなく所得税がかかります。また、自分が保険料を負担していない生命保険金を受け取った場合、あるいは債務の免除などにより利益を受けた場合などは、贈与を受けたものとみなされて贈与税がかかります。ただし、死亡した人が自身を被保険者として保険料を負担していた生命保険金を受け取った場合は、贈与税ではなく相続税の対象となります。

2.課税方法

 贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、一定の要件に該当する場合に「相続時精算課税」を選択することができます。

(1)暦年課税

 暦年課税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額にかかります。したがって、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。

(2)相続時精算課税

 財産の贈与を受けた人(以下、受贈者という。)は、次の場合に財産の贈与をした人(以下、贈与者という。)ごとに相続時精算課税を選択できます。
 贈与者が60歳以上の者(父母または祖父母など)で、受贈者が18歳(令和4年3月31日以前の贈与については20歳)以上、かつ贈与者の直系卑属(子または孫など)である推定相続人又は孫(年齢は贈与の年の1月1日現在のもの)である場合。
 相続時精算課税を選択した場合は、贈与者ごとにその年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から2,500万円の特別控除額を控除した残額に対して贈与税がかかります。なお、この特別控除額は、贈与税の期限内申告書を提出する場合のみ控除することができます。
 また、前年以前にこの特別控除の適用を受けた金額がある場合には、2,500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除限度額となります。
 相続時精算課税に係る贈与者以外から贈与を受けた財産については、暦年課税が適用されます。

3.手続き

 申告と納税については、次の通りです。
 贈与税がかかる場合及び相続時精算課税を適用する場合には、受贈者が、贈与により財産を取得した年の翌年2月1日から3月15日の間に申告と納税をする必要があります。
 なお、相続時精算課税制度を選択しようとする受贈者は、贈与税の申告期限内に「相続時精算課税選択届出書」及び戸籍謄本等一定の書類を贈与税の申告書に添付して所轄税務署へ提出しなければなりません。

4.相続時精算課税を選択した場合の注意点

 相続時精算課税制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。したがって、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することができませんので、当該贈与者から翌年以降贈与により取得した財産の価額の合計額が110万円以下のときでも、上記の期限内に申告をする必要があります。
 また、この制度の贈与者である父母または祖父母などが亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算し、すでに納付した贈与税があれば、その相続税額から納付した贈与税額を控除することとなります。相続時精算課税を選択した受贈者は、相続発生時まで相続時精算課税に係る贈与税の申告書(控)を保管する必要があります。
 なお、暦年課税の場合も、相続によって財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年以内に暦年課税に係る贈与によって取得した財産があるときには、その相続人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与のときの価額を加算しなければなりません。
 相続時精算課税を選択する際は慎重な判断を要します。また、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税などの特例があります。詳しくは税理士にお尋ねください。

税理士 髙木 生

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