【税務】第149弾 インボイス制度への対応

1.はじめに

 消費税の仕入税額控除の方式として、適格請求書等保存方式(以下、「インボイス制度」)が開始される令和5年10月1日まで、あと数か月となりました。本稿ではインボイス制度の概要と、令和5年度税制改正による変更点について要約し、制度対応前の総まとめとして解説します。

2.インボイス制度の概要

 適格請求書(以下、「インボイス」)とは売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝える手段であり、具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「税率ごとに区分した消費税額等」の記載が追加されたものとなります。
 買手は消費税の仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)であるインボイス発行事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。インボイスを発行できるのは、「インボイス発行事業者」に限られ、この「インボイス発行事業者」になるためには、登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。

3.免税事業者からの課税仕入れに係る経過措置

 インボイスの下では、原則、インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、仕入税額控除を行うことはできませんが、制度開始後6年間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。
 経過措置を適用できる期間に応じた割合は、以下のとおりとなります。

期 間割 合
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで仕入税額相当額の 80%
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで仕入税額相当額の 50%

4.税制改正による負担軽減措置

 3.のとおり、免税事業者からの仕入税額控除ができないことから、免税事業者が課税事業者として登録するかどうかがインボイス制度対応の焦点となっています。税制改正では、課税事業者の登録を促すため、免税事業者がインボイス発行事業者となった場合には、3年間の納税額を売上税額の2割に軽減する措置がなされました。
 また、前々年の売上高が1億円以下又は前年の上半期の売上高が5千万円以下の事業者における1万円未満の仕入については、制度開始後6年間はインボイスの保存を不要とし、帳簿の保存のみで仕入税額控除を可能にする措置もなされました。

5.登録申請手続

 インボイス制度が開始される令和5年 10月1日から登録を受けようとする事業者は、令和5年9月 30 日までに納税地を所轄する税務署長に登録申請書を提出する必要があります。
 なお、免税事業者が登録を受けるためには、原則として、消費税課税事業者選択届出書(以下、「課税選択届出書」)を提出し、課税事業者となる必要がありますが、登録日が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中である場合は、課税選択届出書を提出しなくても登録を受けることができます。
 また、関連して簡易課税制度の適用を受ける場合には、原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要がありますが、免税事業者が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間にインボイス発行事業者の登録を受け、登録を受けた日から課税事業者となる場合、その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した消費税簡易課税制度選択届出書をその課税期間中に提出すれば、その課税期間から簡易課税制度を適用することができます。

6.おわりに

 インボイス制度は新しく導入される制度であり、対応について不安に感じている方が多いと思われます。税制改正により、負担軽減措置や申請期限の実質延長も行われており、簡易課税適用の判断もインボイス制度適用と並行して行えることから、免税事業者にとっては対応の判断がしやすくなったといえます。円滑かつ確実に対応するためにも、不明な点等について早めに税務署又は税理士にご相談ください。

税理士 鈴木康也

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