【税務】第150弾 相続により事業を承継した相続人の消費税の納税義務等について

 今回は、相続人が、相続により被相続人の事業を承継した場合の消費税の納税義務と消費税に関する制度の適用等について説明します。

1.消費税の納税義務者

 事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等につき消費税を納める義務がありますが、当該事業者のうち、その課税期間(消費税を計算する期間をいい、個人事業者の場合は、原則として1月1日から12月31日です。)に係る基準期間(個人事業者の場合は、前々年です。)における課税売上高及び特定期間(個人事業者の場合は、前年の1月1日から6月30日です。)における課税売上高等が1,000万円以下である事業者については、課税事業者となることを選択した場合を除き、納税義務が免除されます。

 消費税の納税義務の判定は、事業者が納税義務の有無をその年(又はその事業年度)の開始前に判定できるよう、事業者の「その年(又はその事業年度)における課税売上高」ではなく、「基準期間における課税売上高」及び「特定期間における課税売上高等」という過去の一定期間における課税売上高等により行われます。

2.相続により被相続人の事業を承継した場合の消費税の納税義務

① その年に相続があった場合

 相続があった年の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である相続人(注)(消費税を納める義務が免除されない相続人、消費税課税事業者選択届出書を提出している相続人を除く。)が、当該基準期間における課税売上高が1,000万円を超える被相続人の事業を承継したときは、相続人の相続があった日の翌日からその年の12月31日までの間における納税義務は免除されません。
 つまり、被相続人、相続人のどちらかの基準期間における課税売上高が1,000万円を超えていれば、納税義務は免除されないこととなります。
(注)基準期間における課税売上高が1,000万円以下である相続人には、基準期間に事業を行っていない相続人も含みます。

② その年の前年又は前々年に相続があった場合

 その年の前年又は前々年において相続により被相続人の事業を承継した相続人のその年の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合において、当該相続人の当該基準期間における課税売上高と当該相続に係る被相続人の当該基準期間における課税売上高との合計額が1,000万円を超えるときは、当該相続人のその年における納税義務は免除されません。

③ 共同相続の場合

 上記①と②の規定を適用する場合において、2人以上の相続人があるときには、相続財産の分割が実行されるまでの間は被相続人の事業を承継する相続人は確定しないことから、各相続人が共同して被相続人の事業を承継したものとして取り扱うこととされています。この場合において、各相続人のその年の基準期間における課税売上高は、当該被相続人の基準期間における課税売上高に各相続人の民法に規定する相続分に応じた割合を乗じた金額とされます。
 相続財産の分割が相続開始の翌年の場合、納税義務の判定については、特に注意が必要です。

3.相続により事業を承継した相続人の消費税に関する制度の適用等

 相続により事業を承継した相続人が、課税事業者の選択、簡易課税制度、課税期間の特例の制度の適用を受けるためには、被相続人がそれぞれの制度の適用を受けていたとしても、相続人がそれぞれの要件を満たした上で、改めて届出書を提出する必要があります。
 また、相続人が適格請求書発行事業者の登録を受けていた被相続人から事業を承継した場合、相続の開始が、令和5年9月30日以前と令和5年10月1日以後で、適格請求書等保存方式において必要となる手続及び適格請求書発行事業者の登録の効力が異なります。

制度の詳しい内容については、税理士にお尋ね下さい。

税理士 渡邊 和幸

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