【税務】第161弾 スキャナ保存の活用でペーパーレスな経理体制を!

 電子帳簿保存法は、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする法律で、①「電子帳簿保存」②「スキャナ保存」③「電子取引データ保存」の3つの区分から構成されています。
 そのうち、令和4年改正により令和6年1月以後の「電子取引データ保存」については、データでの保存が義務化されました。一方で、紙で受領した取引関係書類については、紙のまま保存することも認められていますが、紙の取引関係書類をPDFなどの画像データ化して保存する「スキャナ保存」についても、電子帳簿保存法の中で認められています。そこで今回は電子帳簿保存法における「スキャナ保存」について解説していきます。

(1)スキャナ保存の対象となる書類

 紙で作成または受領した書類が対象となります。
 ①重要書類 契約書、納品書、請求書、領収書、借用証書、預金通帳、小切手など
 ②一般書類 見積書、注文書、検収書など
 なお、仕訳帳や総勘定元帳、棚卸表、貸借対照表、損益計算書等の決算関係書類は、前述の「電子帳簿保存」の対象となり、スキャナ保存は非対象ですのでご注意ください。

(2)スキャナ保存の際の入力期間の要件

 保存のタイミングは、書類を受領の都度速やか(おおむね7営業日以内)に保存する、または、月次での入力など業務処理サイクル(最長2か月を経過した後おおむね7営業日以内)に合わせて保存することが必要となります。
 この場合、単にスキャニング作業を終えていればよいのではなく、後述のタイムスタンプや訂正削除履歴などの要件を満たした状態にしなければなりません。なお、一般書類については任意のタイミングで保存することができます。

(3)スキャナ保存の際のシステム要件

①一定水準以上の解像度及びカラー画像による読込

 解像度200dpi相当以上であり、24ビット以上のカラー画像による読み取り(一般書類の場合は白黒可)が必要です。

②タイムスタンプの付与

 電子データがある時点に存在していたこと及び当該電子データがその時点から改ざんされていないことを証明するため、総務大臣が認定する業務に係るタイムスタンプの付与が必要です。なお、保存するシステムが、入力期間内に入力したことを確認できる時刻証明機能を備えていれば、タイムスタンプの付与要件に代えることができます。

③ヴァージョン管理

 スキャナデータについて訂正、削除の事実やその他の内容を確認することができるシステムの利用が必要です。

④帳簿との相互関連性の確保

 スキャナデータとそのデータに関連する帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておく必要があります。なお、一般書類については相互関連性の確保は不要です。

⑤見読可能装置などの備付け

 14インチ以上のカラーディスプレイ及びカラープリンタ並びに操作説明書を備え付ける必要があります。

⑥速やかに出力すること

 スキャンデータについて、次の状態で速やかに出力することができるようにする必要があります。

  • 整然とした形式
  • 書類と同程度に明瞭
  • 拡大または縮小して出力可能
  • 4ポイントの大きさの文字を認識できる

⑦システム概要書などの備付け

 スキャナ保存するシステムなどのシステム概要書、システム仕様書、操作説明書、スキャナ保存する手順や担当部署などを明らかにした書類を備え付ける必要があります。

⑧検索機能の確保

 スキャナデータについて、次の要件による検索ができるようにしておく必要があります。

  • 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先での検索
  • 日付または金額に係る記録項目についての範囲を指定しての検索
  • 2以上の任意の記録項目を組み合わせての検索

 紙のままの保存に比べ、保存スペースが削減できる、検索機能などが利用でき経理の効率化が図れる、スマホなどからスキャンすることで経費精算の効率化が図れるなど、企業や事業者にとってメリットも多い制度です。
 義務化された「電子取引データ保存」に続き、経理の合理化、効率化のために、「スキャナ保存」の活用をご検討されてはいかがでしょうか? 

税理士 矢田 宏昌

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