デジタル化で業務の効率化と税務リスク管理を
近年、企業経営におけるデジタル化の流れは急速に進展しており、経理、財務分野でも例外ではありません。電子インボイスの普及やクラウド会計ソフトの進化により、従来は手作業で行われていた請求、決済、記帳業務がデジタル化、自動化されつつあります。
このような流れをうけて、令和7年税制改正では、デジタルデータによるシームレスな処理に資するための電子取引データの保存制度の見直しが行われました。
電子帳簿保存法改正の経緯と今回の改正の位置づけ
電子帳簿保存法は、段階的な改正を重ねてデジタル化を推進してきました。特に令和4年改正では電子取引データの電子保存義務化が打ち出されましたが、実務負担の大きさから一時的な猶予措置が設けられました。
そして令和6年1月、上記の猶予規定は廃止され、新たな猶予規定が設けられたものの、原則的にはすべての電子取引データについて電子保存が義務化されることとなりました。今回の令和7年度改正は、この流れをさらに一歩進め、単なる電子保存にとどまらず、データの自動連携と活用までを視野に入れた制度設計となっています。
税制上の優遇措置と適用時期
新制度の大きなメリットは、税制上の優遇措置です。国税庁長官が定める要件に従い電子取引データを送受信、保存した場合、これまで電子データに関連する隠蔽、仮装行為に適用されていた重加算税10%の加重措置が適用除外となります。さらに、青色申告特別控除65万円の適用も可能になります。これは正確な帳簿記録を行う事業者に認められる大きな税制上のメリットであり、システム導入によるコストを一定程度相殺できる効果が期待されます。
対象となるのは令和9年1月以降に法定申告期限が到来する国税、および令和9年分以降の所得税です。事業者は今からシステム整備を進めることで、2年後にはこれらの優遇措置を享受できるようになります。
三つの要件と対象システム
制度利用には、以下の三要件を満たすことが義務付けられています。
- 1.改ざん防止の確保
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データの送受信、保存は、訂正削除の履歴が残る、または訂正削除自体が不可能なシステムで行うこと。これにより後からデータが改ざんされた疑いを防止します。
- 2.記帳の適正性確保
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電子取引データの⾦額を訂正削除を⾏った上で電子帳簿に記録することができないこと(⼜は訂正削除の事実を確認できるようにしておくこと)これにより記帳の信頼性が担保されます。
- 3.電子帳簿との相互関連性確保
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電子取引データと電子帳簿との関連性を相互に確認することができるようにしておくこと。これにより税務調査時にも迅速な検証が可能となります。
対象はデジタル庁が管理する仕様に従って送受信されたデジタルインボイス(「Invoice JP PINT」⼜は「JP Self-Billing」)又は、預貯⾦⼝座における決済データのいずれかの電子取引データについて、新設された要件に従って保存できる機能を有するシステムで、国税庁長官が定める基準に適合したシステムをいいます。なお、税制上の措置を受けるためには事前に税務署への届出が必要です。
事業者への影響
取引から会計、税務申告までのデータ連携が進めば、入力や確認作業は大幅に削減され、経理部門の人手不足解消や内部統制の強化につながります。特に中小の事業者にとっては、デジタル化による業務効率化と税務リスク管理の両立が期待されます。
税理士 渡邊 一磨
